刹那の永遠
ひとりでいることはつらい
だからだれかをもとめてる
だれか、でもぼくはであってしまった
そのひから『だれか』は『あなた』になった
とりたてて平和な一日だった
友達の愚痴を聞くこともなければ溜ったレポートに忙殺されることもない。
飲み会のお誘いもない。
そんな平和な一日だった。
欲を言えば雨が降ってほしかった。
僕は雨の日に歩いて帰るのが好きだった
だから、雨が降ってほしかった
そしてあなたに会いたかった。
こんな何もない日はあなたに会いたかった。
でもいつからか、あなたに会えなくなっていた。
理由はぼんやりとわかっていた。
僕はもうあなたを想うことに倦み疲れていたのだと思う。
思い返せばありきたりの事しか言っていなかった。
読み返せば同じ事ばかり書いていた。
僕はもうあなたとどう接して良いのかわからなくなった。
そんな態度があなたに伝わり、ぼくはあなたに飽きられたのだと思った。
そう思ったからこそ、あなたに会いたかった。
意地だった。
『あなたへの気持ちは変わらない』と言った自分への意地だった。
いまではそう思える。
僕たちの関係はもうすでに壊れていた。
でも僕は必死になって壊れていないと思い込もうとしていた。
それを認めてしまったら僕はもうあなたと視線を交わすことさえできなくなってしまう気が下から。
そしてふと気づけば、
いつのまにか僕が壊れていた
あなたへの想いはいつからか執着へとすり代わり、行動のすべてが点数稼ぎになった。
あなたの前では笑顔すらも演技になり、次第にあなたは笑わなくなった。
僕はどうしたらいいのかわからなくなった。
人に当たり散らし、酒に溺れ、ケンカに明け暮れてはあなたを想った。
『いつかあなたが気付いてくれる』
そう思っては自虐的になり、
『なぜ気付いてくれない』
そう思っては破壊を繰り返した。
胃は酒で荒れ、拳の皮はめくれ、目つきはもう以前の僕ではなかった。
あなたが想ってくれた僕自身を壊そうと必死だった。
優しげな目はもうあなたに必要無いと知ってしまったから。
僕はあなたにとってもう必要のない存在だと知ったから。
今思えば弱かったのだろう。
それらすべてはあなたを取り戻そうとする行動だったのだと。
あなたに嫌われ、さげすまれることで僕の価値をあなたの中に作ろうとしたのだと。
愛と憎しみは同一直線上の間逆のベクトルなのだと。
そう思っていたから。
すべてを失ったいまならわかる。
それは逃避だ。
僕の、僕自身への言い訳だ。
そうしないと僕は生きていけなかったから。
でも、あなたを想うことに理由が必要となってしまった時から、僕はだんだんとおかしくなった。
そして気づいた。
僕の大切なものは、手のひらから砂が零れ落ちるように、すこしづつすこしづつ消えていったのだと。
そして僕はあなたへの情熱、あなたへの執着、あなたへの憎しみ、あなたへの関心を、
失った。
いや、失ってはいないのかもしれない。
ぼくは生きている。
生きている限りあなたのことを思い出すだろう、想い返すだろう。
しかし、生きるとは何なのだろう
たしかに僕はあなたのために生きていた。
あなたが笑えば僕は満たされた。
あなたが涙を流せば僕はそれを我がことのように悲しみ、あなたを抱きしめた。
いつだってあなたのことを考えた。
あなたの行動、あなたの思想、あなたの言葉、そのすべてが僕を支配していた。
僕はあなたがいたから生きていたとも言える。
でももう、
あなたはいない
僕の心には生きていない。
あなたがあなた自身をころしたのだ
僕の心の中のあなたは、あなたによってあなたでなくなった。
だから、ぼくは生きていないのかもしれない
そしてわからなくなった
だから、
さよなら
ぼくはきみをころしたしゅんかんにすべてをてにいれる。
このしゅんかんはえいえんにかわらない。
そのしゅんかんだけ、あなたはぼくをみる。
そのいっしゅんでいい。
ぼくというそんざいをみてください。
6秒間にすべてを悟り、僕はあなたに落ちる。
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